まずはじめに、学校法人桜花学園さんについて教えてください。
市田圭さん(以下、市田):名古屋市の昭和区にある女子高で、保育コースや国際キャリアコースなどのコースが充実しており、全校生徒800名を超える規模の高校です。バスケットボール部をはじめ、合唱部といった全国で活躍する部活動や、ハンドベルなど新しい取り組みに積極的な部活動があります。
市田さんは、どのような業務を担当されていますか?
市田: 桜花学園には10年ほど在職していて、入試広報と教育DXを担当しています。英語教師として入職し、学習支援サービスや校務支援システムなどの活用が求められる中で、ICT担当としてDXを推進してきました。現在は、ICTや生成AIの技術を活用して、授業や校務をより魅力的にデザインすることに取り組んでいます。
Webサイトをリニューアルしようという話が出たきっかけはなんですか?
市田: 教員の間でも「Webサイトがわかりにくい」という意見がありました。Webサイトをご覧いただく一般の方はもちろん、学校関係者でも必要な情報がどこに記載されているのか、探すことに少し時間がかかる状況があったんですね。また、写真の見せ方やレイアウト、導線も新しい感性に合わせたものにリニューアルしたいという希望がありました。
リニューアルに際し、候補となる制作会社はどのように見つけたのですか?
市田:「おしゃれなホームページ」と検索しました。「おしゃれ」というのを噛み砕くと、シンプルな、自然な雰囲気です。もともと、いわゆる学校のWebサイトは時々演出が行き過ぎることがあると感じていたので、新しいサイトは生徒の日常が表現されている自然体のものがいいなと考えていたからです。
検索でヒットした中から、これは見やすい、素敵だな、と感じるものをピックアップして、そこからコンペに参加いただく制作会社さんを2〜3社選定しました。
浅見制作所さんを選んだのは、企業サイトからシンプルですっきりと見やすい印象を受けたからです。実績の中に秩父高校さんがあったのも、ピックアップした理由の一つです。
また、浅見制作所さんは営業と制作が分業されていないので、比較的自由度高く、一気通貫で対応していただけるのではという期待がありました。
地元以外の企業に発注するにあたって、不安や懸念事項はありませんでしたか?
市田: 個人的には特にありませんでした。もともと地元の企業かどうかは重視しておらず、こちらのイメージに合致することや、相談のしやすさを大切にしたいと思っていました。確かに地元企業の方が地域への理解が深いイメージがありますが、地元ではないからこそ、既存のイメージに縛られないテイストのWebサイトを提案いただけるのではという期待もありました。
浅見:それよりも、上層部の方に体制面について心配されましたね。基本的にフロントに立つのは僕一人だったので、急に体調が悪くなったらどうしますか? と聞かれました。
ただ、それに対しては大丈夫ですと。制作体制はパートナー企業をはじめ、様々なクリエイターとチームで取り組んでいるので、万が一自分が倒れても制作に支障は出ない体制が整っていますと伝えました。
ちなみに、浅見制作所の組織体制をより盤石にするために、現在は採用活動中なので、ぜひ気になる方は採用ページをチェックしてみてください(笑)。
コンペを通して、最終的に浅見制作所に発注した決め手は何でしたか?
市田: 柔軟な姿勢で相談できることと、お話を通してこちらも自然と学んでいけるような雰囲気があったことです。制作するプロセスも楽しむことができて、いい仕上がりも期待できそうだなと。
Web制作は、どのように進めていったのですか?
市田: 浅見さんがかなりイニシアチブを取って進めてくれましたよね。授業や校務と並行してWebサイトも進めるとなると、なかなか動けない場合もあるので、すごく助かりました。
浅見: 桜花学園さんに限らず、弊社でWebサイトを制作する際は、デザインに入る前にまず前段の設計をしっかり行います。市田さんとお話しする中で特に感じたのは、女子教育に対する既存のイメージから脱却し、より広い視野を持って取り組みたいという意志です。いわゆる「女子校っぽいサイト」ではなく、より本質的な、桜花学園の理念や取り組みについて訴求するサイトにしようと方向性を決めました。
市田: 進める中で、生徒たちの目線を入れた方が、より学校のリアルが伝わる親しみやすいサイトになるし、生徒たちも愛着が湧くのではないかという話になったんですよね。
そこでキャッチコピーやデザインなどについて全校生徒にアンケートを取りました。生徒たちと一緒に制作しているという感覚を得られたのはすごく良かったですね。
特に力を入れたコンテンツは何ですか?
浅見: 「桜花の学び」というコンテンツです。こちらは新しく作りましょうと提案させていただきました。桜花学園さんは、ICT教育をはじめ、地域のコーヒーショップと連携してフェアトレード・コーヒーをプロデュースしたり、アフリカ・アジアの子どもたちに給食を届けるSDGsの取り組みをしたり、ドローンを使った探究学習をしたり……と、新しい学びにチャレンジしているんですよね。そこがすごく魅力的だなと感じましたし、まさに訴求すべきポイントだと思い、「桜花の学び」にまとめました。
浅見:あとは、TOPページの「コース・カリキュラム」の部分に掲載している3つのコンセプトですね。コンセプトはもともとなかったんですが、桜花学園さんの取り組みをより伝わりやすくするためには、コンセプトを作った方がいいという話になったんですよね。
市田:0から新しく作るというより、自分たちが今実践していることを整理し、言語化していきました。その結果、「DIVERSITY」「GLOCAL」「CO-CREATION」の3つのコンセプトが生まれました。
浅見:先生方は、それぞれの授業や業務がある中で新しいことにチャレンジしているので、それを体系的に説明する時間をとるのはどうしても難しい。なので、そこをお手伝いできたのは良かったなと思います。
Webサイトリニューアルに加え、パンフレット含む年間の広報全般を依頼したと伺っています。継続発注に至った理由を教えてください。
市田: 当初からWebサイトだけでなく、それをベースに統一したコンセプトでパンフレットやリーフレットなどの広報物を制作したいと考えていたので、コンペの時点でそれらを依頼できるかどうかも加味していました。その上で、少しだけチャレンジしたデザインを提案いただけたことも、継続発注を決める後押しとなりました。
少しだけチャレンジしたデザインとは、どういったものですか?
市田: 例えば、学校関連の広報物と聞くと、表紙に笑顔の生徒がバーンと載っているイメージがあると思いますが、敢えて顔を載せない、ダイヤモンドのようなデザインを提案してくださり、ああ、面白いなと。
広報物制作は、どのように進めていったのですか?
市田:本校に関心をもっていただける方を含め、広く中学生のみなさんにも手に取っていただけるパンフレットや、オープンキャンパス・学校説明会のチラシ、塾や受験生の保護者の方を対象にしたリーフレット、ノベルティなど、デザインや伝えたいメッセージを明確にしながら、順番に制作していきました。
浅見: 制作するにあたっては、まず既存の広報物について、「これはどういう目的で作っているのか?」と確認し合いました。一番簡単なのは、既存のものをなぞって作ることです。けれど、それは本質的ではありません。市田さんも同様の考えだったのでそういった議論ができるのはすごくありがたかったですね。
その結果、今まで作成していたものに加え、ストーリーブックや動画を提案させていただきました。とは言え、年間予算は決まっているので、必要なものを精査し、予算の配分も同時に相談させていただきながら進めました。
市田: ストーリーブックは卒業生と現役生のインタビューを載せたもので、卒業後の進路などを紹介しているのですが、保護者の方々からの評判がすごくよくて。
浅見: 当たり前ですが高校卒業後もキャリアは続いていくので、自分のキャリアを考える時、志望校の卒業生がどういう道に進んでいるか知ることはすごく重要なので、必要なコンテンツだと思い作らせていただきました。
市田: 動画制作は当初頭になかったんですが、他の学校のWebサイトに載っている動画を見て、確かにわかりやすいと思ったんですよね。
浅見: 市田さん含め僕たちプロジェクトチームは、何のために作るのか、誰に向けたメッセージなのか、視聴後にどういう気持ちになるのかについて徹底的に向き合いながら制作しているので、単に動画が良さそうだから作るのではなく、このチームだからこそ動画を作るべきだし、他校と差別化ができると思ったんですよね。
市田: 動画には生徒に出演してもらって、今何に取り組んでいるか、何が楽しいかについて話してもらいました。リアルで等身大の生徒の声やスクールライフを伝えることを重視しました。
浅見: 学習塾の先生や保護者に配る塾用のリーフレットも新しく作りましたよね。これまで塾に配布していたのは、学校案内の縮小版みたいな感じだったので、「こんなコースがあります」とか「こういう制服です」といった内容でした。
ただ、配布先が塾の先生や保護者だということを踏まえると、子どもたちを預けるための安心材料が必要だと考え、満足度アンケートの結果などを掲載するようにしました。
新しい広報物について、どういった意見がありましたか?
市田: 例えばパンフレットを受け取った方からは、一目見た時の印象の良さ、わかりやすさについてポジティブな声をいただくことができました。
また、一連のブランディングを通して、学校内で入試広報へのモチベーションも上がってきた印象があります。入試担当者は、中学校などで開催される説明会に毎回資料を持参するんですが、今までは何種類もの資料を大量に持って行って説明する必要があったんですね。けれど、今は1枚のチラシに情報が網羅されているので助かると喜んでくれています。また、ブランドデザインが統一されているので、シンプルでわかりやすいとも言ってくださっていました。
浅見: 進学先の検討は、生徒や保護者が年間を通して行うので、ブランドが統一されていることによるメリットは大きいと思います。「桜花らしい」というブランドイメージが確立されれば、検討する段階で想起される確率も高くなりますよね。だからブランディングはすごく重要なんです。
最後に今後の展望と、その中で、浅見制作所に期待していることを教えてください。
市田:浅見さんは、お話を通して新しい感覚やこちらが思いつかないアイデア・イメージを伝えていただけるところが魅力的です。
今後もこちらのやってみたいことと合わせて、イノベーティブなものづくり、企画づくりを一緒に行っていきたいです。
クライアントプロフィール
桜花学園高等学校
創立117年の伝統を誇る女子高校。「心豊かで気品に富み、洗練された近代女性の育成」を建学の精神とし、実践項目として四訓(感謝・規律・奉仕・努力)を掲げています。茶道や着付け、キャリア教育などを通じて視野を広げる「桜花プログラム」を特徴の一つに持ち、国際キャリアコースをはじめ一人ひとりにフィットするコースを設けています。