まずはじめに、「タテノイト」さんの事業概要や、舘野さんの経歴を教えてください。

舘野繁彦さん(以下、繁彦さん):私たちは、保育園やフリースクール、子供たちの居場所を提供するカフェ、さらには「ちっぽけツアー」というジオツアーも運営しています。言うなれば、私学教育を行っています。

僕も妻(春香さん)も、元々は大学の教員や研究員で、専攻は地球惑星科学でした。教育分野に興味を持ったきっかけは、娘が生まれたことです。それまで社会にあまり興味がなかったのですが、娘の将来を考えるようになり、20年、30年後の社会を想像したとき、教育の重要性を感じたんです。それが2017年頃のことでした。

浅見制作所にWebサイトを依頼するに至った経緯はなんですか?

繁彦さん:浅見さんを知ったのは、2018年に開催された、地方移住に関するイベントです。妻の故郷の埼玉県横瀬町で教育事業をやりたいと考えていたので、地元での繋がりを求めて参加しました。そのイベントには埼玉県秩父エリアの人たちが集まっていて、そこで浅見さんが登壇して話していたんですよ。

横瀬町を盛り上げている人がいるなと思って、その後もSNSを見ていたんですね。やはり彼がキーマンだと感じ、面識はなかったんですが、Facebookのメッセンジャーで連絡をしてみたんです。

もともと浅見さんが関わっていたサイトを見て素敵だなと思っていたのと、何より話が通じたんです。私たちの教育に対する理念など、考えていることに共感してくれて。

その共感が、Webサイトを作る上で大事だと思い、浅見さんにお願いしようと話が進みました。Webサイトの話をしている中で、ブランディングに関する話にもなったんですよ。

浅見:舘野さんの話を聞けば聞くほど、全体のブランドがないとサイトは作りにくいなと感じました。舘野さんならではの事業を表現するためには、まず世界観の構築が重要だな、と。

当初はWebサイトに関する相談のみでしたが、話が自然と広がっていって、より深い部分に昇華されていったんですよね。そこでブランディングも含め、お手伝いすることになりました。

Webサイト制作はどのような流れで進めていきましたか?

繁彦さん:まず自分たちがやりたいこと、理念、コンセプトを文章にまとめて、浅見さんに読んでもらいました。

浅見:舘野さんたちは、画一的ではない新しい教育にチャレンジしているんですが、これをそのまま表現するとすごく難しい言葉になってしまう。ともすると、地元の人から「何をやってるかわからない」と捉えられてしまう可能性があったんですよね。

それは勿体無いので、舘野さんの考えを全て書き出してもらった上で、誰にでも伝わるような形で施設名やロゴなどに落とし込んでいく作業をしました。

最終的に施設名は「タテノイト」になったとのことですが、それ以外にも候補はありましたか?

繁彦さん:いくつかありましたが、私は「タテノイト」と聞いてすぐにいいと思いました。いくつかの意味が含まれているのは面白いなと感じましたし、僕らの名字が使われているところも良いなと。

そこからロゴを作り、サイト制作へと進んだんですね。

繁彦さん:そうですね。Webサイトのコンテンツで、特に浅見さんが重要だと言ったのが、「タテノイトとは」のところです。そこには5章立てで、自分の思いを綴っています。

浅見:この部分は、文章量が多く、難しい内容にしてでも、教育へのストーリーが伝わる方がいいなと考えてました。ぱっと見読みやすいかどうかより、本当に興味がある人に読み込んでもらえるように。

従来の保育園ではないからこそ、選ぶのに勇気がいるんですよね。共感してくれる親御さんに、この事業についてしっかり考えてもらいたい。だから深く刺さるようなコンテンツになるよう意識しました。

5章立てでコンセプトを紹介

その後、「NAZELAB」のブランディングもお願いしたと聞いています。

繁彦さん:「タテノイト」のサイトを作ってもらったとき、僕らの理念や考えに深く共感し、理解してくれた上で、表現に落とし込んでもらえたと感じました。だから「NAZELAB」の方も、フリースクールや、第三の居場所といった複雑な内容をうまく表現してくれるだろうと思って依頼しました。

「NAZELAB」は公益財団法人日本財団の「子ども第三の居場所」助成事業として採択され、子どもたちの新しい居場所の選択肢として2022年7月にスタートしました。主に学校に行っていない子たちも来るんですが、人によってはポジティブな印象を持たない場所です。だから「NAZELAB」を選ぶことが誇りに思えたり、かっこいいと思えたりするようなサイトのデザインやロゴにしようという話をしました。

「NAZELAB」という名前には、どのように至ったんですか?

浅見:施設名については、結構すぐにピンときたんですよ。クリエイティブに入る前に「これからの教育は、こうだったら良いよね」ということについて何度も話していて、その中で「“なぜ”から学びは始まる」というアイデアが出たんですね。

ちなみに、候補としては「メタラボ」という名前もありました。好きなことをメタ認知し、深掘りできるように、という意味です。他には「トイラボ」という名前もあって、それは自分なりの問いを立てられる場所でなければいけない、という意味が込められていました。

最終的に、「なぜ」という言葉には探求する意味もあるし、いいなと思って提案しました。

繁彦さん:この中から選んでね、というより、「NAZELABでどう?」という感じでした。ちょっと照れくさそうに言った浅見さんのことは覚えています(笑)。

「タテノイト」と「NAZELAB」のWebサイトで、それぞれ気に入っているところを教えてください。

繁彦さん:「タテノイト」のサイトは、パキッとした雰囲気がすごく好きですね。よくある保育園のWebサイトとは違う、明朝体の感じが好きなんです。あとは先ほども言った、「タテノイトとは」の部分です。そこに僕らの理念を書き切れたことが本当に良かったなと思っています。

「NAZELAB」の方は、ポップな感じに仕上がっていて、すごくいいなと思っています。多分、こんな楽しそうなフリースクールのWebサイトはないと思います。

浅見:フリースクールやオルタナティブスクールは、ソーシャルグッドの文脈からか、あまりWebサイトや広報に力を入れていないところが多いんですよ。でも舘野さんたちの「NAZELABを選ぶことを誇りに思って欲しい、かっこいいことだと感じてほしい」という強い思いを表現したくて、カラフルでポップなデザインにしました。

舘野春香さん(以下、春香さん):私は「タテノイト」は全体的に好きなんですが、特に「タテノイトとは」を入れたのは良かったと思っています。利用している子供たちの保護者の方々も読んでくれて、いいコメントをもらっています。

「NAZELAB」の方は、明るい雰囲気がいいなと思っています。建物は町の中心にあって1階がガラス張り、オープンな感じなので、それが伝わるなと。コンセプトの部分もわかりやすくまとまっています。メンバーの紹介も、ちょっと楽しい感じで書いているのがいいですね。

繁彦さん:メンバー紹介ページは、浅見さんを含めて本当にいろんな人を掲載させていただいてます。多様な人が参加しているということが一目でわかるのもいいですよね。

メンバー紹介ページ

改めて2つのサイト制作を通じて感じた、浅見制作所の強みを教えてください。

繁彦さん:僕らは全く違う分野からこの世界に入ってきて、浅見さんを含め、たくさんのクリエイティブを手がける人たちを見てきました。彼らが僕らの想いを理解し、形にしてくれることが素晴らしいと思いました。

特に浅見さんに仕事をお願いして感じたのは、とにかく想いを形にしてくれる部分がすごいなと。そもそも考え方が近かったことも助かりましたし、深く理解してくれたからこそこのようなWebサイトになったんだと思います。

春香さん:私としげちゃん(繁彦さん)は似た経歴なので、時々独りよがりになりがちなんですよね。そんな時に浅見さんと話すと、軌道修正もしてくれたり、私たちが当たり前だと思っていたことを面白く捉え、新しい視点を提供したりしてくれます。

浅見さんは私たちの想いを丁寧に聞き出し、整理してくれるので、Webサイト制作だけでなく、事業全体において大きな助けとなりました。

今後の展望と、浅見制作所に期待することを教えてください。

繁彦さん:今後も浅見さんにはWebサイトのアップデートをお願いするとともに、新しいアイデアを実現する手伝いをして欲しいなと。一緒に協力しながら進めていきたいですね。

春香さん:私たちのやりたいことを理解してくれる人は多くないので、浅見さんとの話はいつも展望が見えるような感じがします。アドバイスも含め、事業全体を考えるいい機会になっています。今後も引き続きサポートしてくれたら嬉しいです。

浅見:舘野さんたちが取り組んでいることは、本当に社会に必要な、素晴らしいことなんですよね。新しい教育の分野を切り開くのは大変ですが、クリエイティブの力でそのお手伝いをすることは、やりがいがあります。これからも、舘野さんたちに伴走できる存在でありたいと思っています。

クライアントプロフィール

舘野 繁彦さま(写真右)

1978年生まれ。神奈川県川崎市出身。東京工業大学地球惑星科学専攻博士課程修了。東京工業大学地球惑星科学専攻特任助教、岡山大学惑星物質研究所特任准教授、東京工業大学地球生命研究所研究員を経て保育士へ。世界で初めて地球中心の圧力温度条件を達成(2010年米サイエンス誌に掲載)。博士(理学)・保育士・保育ナチュラリスト。探究学舎「深めるコース・地球シリーズ」授業担当。

舘野 春香さま(写真中央)

1984年生まれ。埼玉県秩父郡横瀬町出身。東京工業大学地球惑星科学専攻博士課程中退後、海洋研究開発機構研究員。その後、岡山大学惑星物質研究所助手、東京工業大学先導原子力研究所研究員、日本原子力研究開発機構研究員を経て保育士。地球外核の二層対流の可能性を提案し、成果が2011年米サイエンス誌に掲載。博士(理学)・保育士・第1種放射線取扱主任者・NPO法人「絵本で子育て」センター絵本講師。