【語らい#1】浅見制作所:代表 浅見ゆたか

―大学卒業から「浅見制作所」設立までの経緯を教えてください。

個人プロジェクト「浅見制作所」の立ち上げまでに、大企業である総合商社で7年、ITベンチャー企業で4年余り働きました。

新卒で入社した東京の総合商社では、営業を担当し、営業員300名の中での売上げトップを記録。ただ、企業内での評価が高まるにつれ、「個人としての自分の力を試したい」という想いが芽生えたのですね。また、「成長のためには、大企業でのルーティーン化した働き方から抜け出す必要がある」とも感じ、転職を考えるようになりました。

当初は、IT業界には興味がなかったのですが、企業説明会で出会った社員10名ほどのベンチャー企業の社長に一目惚れしてしまったのです。社長の仕事に対する愚直な姿勢、地味な努力を成果につなげる働き方に心を打たれ、「ここで自分を成長させたい」と感じ、決断しました。

ところが、ベンチャー企業に入ってみると、大企業の看板を失った自分の力不足を痛感するばかり。挫折感を味わいましたね。それでも、愚直に努力を続けることで、4年目には、私一人で4500万円の利益を上げるほどに。お客様は大企業が中心で、大手航空会社やビール会社のWebサイト設計なども担当し、良い経験になりました。ただ、そのベンチャー企業も、4年余り勤めたのち、2016年10月に退社。フリーランスとして働くことを選び、生まれ故郷である埼玉県秩父にUターンしました。

 

―一人で4500万円の利益とは、すさまじい成果ですね。企業で成功体験を重ねながら、なぜ、地方でフリーランスになる決断を?

退社を決めた一番の理由は、ずっと抱いていた「地方に住みたい」という想いを実現するためです。30代になり、「人はモノでは満たされない」ということに気づいたんですね。「では、本当の幸せとは何か」を考えたときに、私にとって幸せな生き方とは、地方で自然に囲まれて静かに過ごすことだったのです。また、自分の働き方を自分でデザインし、力を発揮したいという想いもありました。

2015年6月からブログを書き始め、「ネットがあれば、どこからでも情報発信ができるし、人とつながることもできる」と実感していたことも、秩父へのUターンを後押ししたと思います。

 

―ブログを書き始めたきっかけは何ですか?

あるブロガーの記事との出会いです。自分の思いに従って行動すること、好きなことを仕事にすることを呼びかける記事が、心に刺さりました。ちょうど私自身が、「自分の人生は敷かれたレールなのではないか?」と違和感を抱いていたタイミングで、その生き方が「本当に幸せなのか」と悶々としていたので。「妥協しない生き方をしたい」、「自分の素直な気持ちを発信したい」、「より楽しい人生にしたい」。そんな想いがあふれ、自分を変えるためにも、ブログでアウトプットを続けてみようと思ったのです。

 

―ブログ開始1ヶ月で、いきなり50万PVを記録したそうですね?

そうなんです。「お店の店員さんに敬語を使わない人は、価値と対価のバランスが分かってないと思う」という記事がバズりました。「一個人が日頃思っていることを文章化して発信する。それだけで、こんなに影響力を発揮できるネットはすごい!」と、改めてネット発信のパワーを体感した瞬間です。

 

―秩父のローカルメディア『ちちぶる』も、ベンチャー企業の退社前にスタートしました。これは秩父へのUターンの準備だったのでしょうか?

秩父へのUターンを考えた当初は、「会社員ではない働き方がしたい」という思いだけで、実はカフェ経営なども考えていました。ただ、ちょうどブログを通じて、ネット発信の楽しさとWebの可能性を体感していたときで、「ネット発信で何かできるのでは」という思いもありました。

『ちちぶる』を始めたのは、秩父を離れて東京で生活するようになり、改めて秩父の魅力に気がついたこと、その魅力が伝わる情報発信が不足していることに気づいたことがきっかけです。ローカルメディアが注目され始めていたこともあり、「だったら、私がネットで秩父の魅力を世界に発信してみよう」と思い、2016年3月に『ちちぶる』を開設しました。

 

―「浅見制作所」では、『ちちぶる』のようなメディア運営のほか、Webサイト制作、コンテンツ制作、ブランディングなど、Web系サービスを提供していらっしゃいます。「浅見制作所」の強みは何でしょうか。

例えばWebサイト制作であれば、私一人でヒアリング、企画提案、コンテンツ制作、サイト構築までトータルサポートができます。これが最大の強みではないでしょうか。一人で動いていることによる機動力、柔軟性、一貫性を担保、さらにクオリティも維持できますし、スピード、コスト削減など、すべてにおいてプラスになっていると思います

 

―仕事をする上で、浅見さんが大切にされていることは何でしょう。

どんな仕事にも共通することだと思いますが、一番大切なのは、お客様と誠実に向き合い寄り添うこと、責任を持ってやりとげ、信頼を得ることだと思っています。

Webサイト制作でいえば、お客様が叶えたいことを正確に理解し、お客様のサービスの魅力と価値を必要な人に届けること。当然ながら、見る人により深く刺さり、人を動かすことができるパフォーマンスの高いWebサイト、つまり売上につながるWebサイトを作ることです。

 

―フリーランスとしての働き方を経験してみて、いかがですか?

働き方とは、つまり、生き方ですよね。1日24時間を、会社や他人の都合ではなく、自分の意志でデザインすること。それが、フリーランスとしての生き方です。

自分がデザインした時間の中で、能力を発揮して価値を生み出すことが、フリーランスとして働くということですが、仕事に限らず、自分で決めた時間の中から生まれるすべての結果は、自分に責任があります。当然、ムダな時間は一秒もないわけですね。だけど、そうした時間には、必ず自分にとっての「意味」を持たせることができる。それがフリーランスであり、その生き方こそ「幸せ」そのものだと感じています。

 

―最後に、浅見さんの夢や展望をお聞かせください。

引き続き、たくさんのコンテンツを生み出していきたいですね。Will=意志のあるお客様と信頼関係を築き、一緒になって高品質でクリエイティブな仕事を作り上げる過程を楽しめたら嬉しいと思っています。また、自分と関わる人をもっと増やして、その人たちに「楽しい」「やってよかった」と感じてもらえる仕事をやっていきたいですね。できる限り、自分と関わる人には幸せになってもらいたい、そう願っています。

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